第22回JVA中小企業庁長官賞
秋元 里奈氏
株式会社
代表取締役社長
- プロフィール
- 神奈川県相模原市の野菜農家に生まれる。慶應義塾大学理工学部を卒業後は、2013年に株式会社ディー・エヌ・エーへ新卒入社。2016年11月に一次産業分野の課題に直面し、株式会社ビビッドガーデンを創業。2017年8月にこだわり生産者が集うオンライン直売所「食べチョク」を正式リリース。2021年2月に初著書『365日 #Tシャツ起業家』を出版。第22回「Japan Venture Awards」にて、中小企業庁長官賞を受賞。
- Q1JVAを受賞した時の感想と応募したきっかけ
- 「Japan Venture Awards(JVA)」への応募を決意したのは、会社の成長性を発信していきたかったからです。というのも、これまで私たちは事業の社会的意義を評価いただくことはあっても、事業成長について触れられることは稀でした。お客さまの数も順調に増えてはいるのですが、toCビジネスはサービスを利用してくださっているお客さまも提供元である会社のことをよく知らないというケースが珍しくありません。
このアワードは“社会的課題を解決する事業を行っている成長フェーズの企業”を称える表彰制度だとお伺いしたため、「受賞することで事業の成長についても改めて評価していただけるのではないか」と考えたのです。加えて、会社の知名度向上にも寄与するのではないかと思いました。
審査では会社の成長性を考慮していただいているなと感じましたし、中小企業庁長官賞をいただいた際には、非常に嬉しく思いましたね。会社を運営する中で一番大切なのは事業で成果を残すことであり、今回の受賞はその通過点の一つなのだと考えています。
受賞後にはVCや投資家の方々から多くのお祝いコメントをいただき、注目度の高いアワードなのだと改めて感じました。
- Q2起業に至ったきっかけと現在の事業
- 実家で祖父母が農業を営んでいて、私が中学生の頃に廃業しました。私自身は母から「農業は大変だから継がないでほしい」と言われて育ち、大学卒業後はIT企業に勤務していました。
ただ、ある日ふと実家に帰省して荒れ果てた畑を見た時に、悲しい気持ちになったのです。「どうして農業を廃業しなければならなかったのだろう」と。
そこから、生産者が小規模でも安定した収益を持続的に得られる仕組みを作りたいと考えるようになり、生産者へのヒアリングを重ねて思いついたのが「食べチョク」です。全国の生産者から、食材や花きなどを購入できるオンライン直売所サービスで、2017年のリリースから3年後には認知度・利用率において国内No.1の産直通販サイトにまで成長しました。現在は8,000軒以上の生産者と約80万人のお客さまにご登録いただいています。
家庭菜園ではなくプロとして生産されている方に特化しており、生産者のこだわりが詰まった食材などが集まっているのが魅力です。
単品で購入できるのはもちろん、数ある商品の中からどれを選ぶべきかわからないというお客さまに向けて定期便サービスがあるのも特徴です。2022年10月からは、生産者とお客さまの交流を深められるようにと同じ生産者の商品を複数回購入するなどの条件を満たしたお客さまを「お得意さま」に認定する機能も開始しました。企業間のギフトや社員の福利厚生に利用できる「食べチョク for Business」も好評いただいています。
- Q3今後の展望と読者へのメッセージ
- これまでの農業は「規模を大きくする」「生産性を向上して効率的に生産する」ことが評価されていました。それも重要な観点であり、食材を安定的に作ることも大切です。
一方で非効率に見える方法であっても、高品質の食材を少量ずつ生産している方々もいらっしゃいます。私たちは後者の生産者に対しサービスを提供していて、そういった方が正当に評価される世の中にしたいと考えています。
また「食べチョク」に登録いただいている生産者の多くは、40~50代の業界では若手と呼ばれる方々です。農家の平均年齢が68歳だと言われていることを踏まえると、高齢の生産者に向けたサポート体制を充実させる必要があります。2022年6月に実施した資金調達で得た資金を活用し、今後は自治体や地域との連携を強化する予定です。これまでも地域の生産者にアンバサダーをしていただいて出品サポートを行ったり、自身で産直ECを始めることはハードルが高いと感じられている生産者向けに「食べチョク」の説明会を行ったりしてきました。こうした動きを今後も強化していくことに合わせて、一般消費者への認知を高めるためのマーケティングにも注力していきたいですね。
最後に、JVAは事業の将来性や信頼性を高めるためにはぴったりのアワードだと思います。応募を検討している方は、ぜひチャレンジしてみてください。