第22回JVA受賞者インタビュー

第22回JVA SDGs特別賞

森山 健

株式会社
Godot 
代表取締役

個別化エンジン「Nudge AI®︎」で一人ひとりに合わせたサービスやコミュニケーションを実現し、社会を包摂する

個別化エンジン「Nudge AI®︎」で一人ひとりに合わせたサービスやコミュニケーションを実現し、社会を包摂する

プロフィール
1979年、神戸市生まれ。米国シアトルで育ち、ジョンズ・ホプキンス大学工学大学院卒業後、ゴールドマン・サックス証券へ入社。ヘッジファンド、ソーシャルビジネスの共同創業、オックスフォード大学行政大学院留学を経てケイスリー株式会社の創業に参画し、2022年に同社の事業を法人化。特定非営利活動法人Policy Garageの創業理事も務める。第22回「Japan Venture Awards」にて、SDGs特別賞を受賞。
Q1JVAを受賞した時の感想と応募したきっかけ
創業6ヶ月目にも関わらず受賞できて、非常に嬉しく思っています。私たちは社会課題の解決やSDGsに取り組むことを目的とした会社であり、SDGs特別賞という“Godotらしい賞”をいただくことができて、誇らしい気持ちになりました。
応募しようと思ったきっかけは、お世話になっている株主の方に「Godotと相性のいいアワードがある」とご紹介いただいたからです。自分たちでも「Japan Venture Awards」について調べる内に、歴史のある賞で、スタートアップや起業家の登竜門だと言われていることを知り、その時点で応募締め切りの2週間前だったのですが、何とか書類を仕上げました。
受賞後はVCや監査法人、金融機関、IR支援企業といったさまざまなところからご連絡をいただくことが増えていて、影響力のある賞なのだなと実感しています。また、現在はさまざまなスタートアップが誕生していますし、採用にも効果的なのではないかという期待もありますね。「スタートアップで働きたい」と考えている方は多いものの、共感できる会社を探すのは大変なことでしょう。受賞をしたことで、そういった意欲がある方の目に留まるようになったのではないかと考えています。
Q2起業に至ったきっかけと現在の事業
オックスフォード大学で行動科学に出合い、イギリスやアメリカではすでに社会実装が進んでいることを知り、興味を持つようになりました。勉強を進めるにつれてその面白さに魅了される一方で、気になったのはDXが進んでいない分野だということです。というのも、当時はいわゆる専門家が仮説を立て、それをもとにサービス設計をするという流れが一般的でした。それでは非常に時間がかかりますし、仮説の域をでないため再現性も高くありません。行動科学をデータドリブンに進める方法がないか検討し、辿り着いたのが機械学習と組み合わせるビジネスモデルです。
Godotの事業を一言で表すと、一人ひとりに合わせて健康行動を促す個別化エンジン「Nudge AI®︎」の開発・提供です。事例をご紹介すると、大阪市から「大腸がん検診の受診率が低い」という相談を受けたことがあります。そこで「Nudge AI」を活用してサービス設計を見直し、市民に向けて個別化したメッセージを作成しました。すると、これまでがん検診を敬遠されてきた市民層の受診率を、昨年度の0%から46%にまで引き上げることに成功したのです。
強調したいのは、マーケティングのように市民の絞り込みにAIを使うのではなく、誰一人取り残さない行政サービスを実現するためにAIを活用している点です。つまり、従来のマーケティングとはサービスの設計思想が根本的に異なります。
Q3今後の展望と読者へのメッセージ
現在、WHOとともに途上国の三大感染症の一つである結核に関する課題解決に取り組んでいます。具体的には、早期発見と服薬を続けられるように患者を支援する際に「Nudge AI」を活用できるかどうかの検証を始めている段階です。並行してオーストリアに子会社を作る準備も進めていて、ヨーロッパを拠点に最先端のAI倫理やUI/UXを研究したいと考えています。
また、私がこの事業に本気で取り組んでいる理由として、自閉症の息子の存在が大きく関わっています。自閉症は障がいではなく、物事の見方が違う、脳の働き方が違う、という見方が浸透してきているものの、いまだ受け入れられる状況になっていません。この状況を変えなくてはという思いから、誰一人取り残さないサービスを設計するためのプロダクトに本気で取り組んでいるのです。
会社として成長をするための準備は整っていますし、一緒に世界に挑戦してくださる“普通じゃない”方から当社への応募をお待ちしています。
最後に同じ起業家へのメッセージを送るとするならば、「スタートアップとして成長するためには会社外での仲間づくりも大切」です。私自身、今回の受賞を通して、新しいコミュニティの一員になれたと感じています。気難しく考えず、仲間づくりの一環として応募してみるのも良いのではないでしょうか。

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