第22回JVA受賞者インタビュー

第22回JVA科学技術政策担当大臣賞

緒方 健

TeraWatt Technology
株式会社 
代表取締役CEO 兼
共同創業者

21世紀の人類の
新基盤産業の創出へ向けて。
次世代電池の量産化が
もたらすもの

21世紀の人類の
新基盤産業の創出へ向けて。
次世代電池の量産化が
もたらすもの

プロフィール
東京大学工学部卒。英ケンブリッジ大学で博士号取得。電池メーカーで電池開発に従事した後、TeraWatt Technologyを2020年に創業。第22回「Japan Venture Awards」にて、科学技術政策担当大臣賞を受賞。
Q1JVAを受賞した時の感想と応募したきっかけ
主に2つの理由から応募しました。
1つ目は過去の受賞者を見ても、我々と同じDeep Techと呼ばれる社会の基盤技術をアップデートする素晴らしい技術ベンチャー企業の代表が多く選ばれている事です。その中でも科学技術政策担当大臣賞は特に素晴らしい技術をお持ちの会社が多く、その方々と同じ賞をいただけた事は非常に光栄なことです。また「Japan Venture Awards(JVA)」は、事業の詳細を精査した上で評価してくださっていますし、受賞を通して私たちの取り組みが社会的に認められたのだと嬉しく感じました。というのも、私たちが取り組んでいる分野は、業界外の方からすると事業内容が技術詳細に占められ理解が難しく、“凄そうだけどよくわからない”地味な事業だと思われることも少なくないからです。
2つ目の理由は、Deep Techをご専門とされない方々への説明のしやすさです。今回の受賞を通して、必ずしもDeep Tech領域をご専門とされていない投資家や銀行、また新規のベンダーに向けての事業説明や会社のアピールがしやすくなりました。受賞後には取引のある方々や友人からお祝いの言葉が多く届いていて、影響力を実感しています。JVAに応募した理由でもある、会社の信頼を高めることにも繋がっていると感じています。
Q2起業に至ったきっかけと現在の事業
私は東京大学の工学部で材料工学を学び、卒業後は英国ケンブリッジ大学でシリコンという材料のナノテクノロジーを用いた基礎研究を行いました。そこで当時、ニューヨーク州立大学からケンブリッジ大学にヘッドハンティングされて移籍してきた著名電池研究者のクレア・グレイ教授に出会ったことを機に、リチウム電池に興味を持ちはじめたのです。教授のもとでしばらく研究を続けていく中で、今世紀の人類活動における電池の重要性にどんどん魅了されてゆきました。しかし、電池の場合は「学術研究」と「ものづくり」の距離感が非常に遠く、大学という研究機関にいながら実用化を目指すのは難しい側面があります。次第に「最先端の開発や製造が行われている現場」に身を移したいと思うようになり、国外の民間電池関連企業に就職しました。
キャリアのほとんどの時間を日本国外で過ごす中で、電池産業における日本、欧米、アジア諸国の良い所と足りない所の双方が体に染みた感覚を今でもよく覚えています。その様な現場での経験を経て、起業した形です。
リチウムイオン電池で最も重要な指標の1つであるエネルギー密度(1キログラムにどれだけのエネルギーを貯め込めるか)は、現在280Wh/kg程度でその限界が300Wh/kg強と言われています。TeraWatt Technologyでは、リチウムイオン電池の「聖杯(holy grail)」とも言われている400~500Wh/kg領域の、革新リチウムイオン二次電池の量産・商用化に取り組んでいます。私たちは、この様な電池を数年内に量産・販売することを目指しており、すでに初期のパイロット製品を一部のお客様に出荷している段階です。
Q3今後の展望と読者へのメッセージ
Deep Techには「Born global」に世界をひっくり返す力がありますし、Deep Techこそ日本のスタートアップが世界を獲れる唯一の分野と言っても良いのではないでしょうか。次世代電池に関しては商用化「されるだろう」「される予定だ」と言われつつ、実現しない日が長く続いてきましたが、私たちはこの誰しもが欲しい聖杯をめぐる過酷な世界競争の中、必ず量産と商用化をやり遂げます。ニッチ市場ではなく敢えて莫大な規模の市場に正面から挑み、そこでシンプルに成功の道筋を示すことが日本の産業全体、およびDeep Tech領域のスタートアップを活性化することにも貢献できるのではないかと考えています。
私たちと同じように、視線が常に日本を超え、より良い世界のために必要な技術に取り組んでいらっしゃる起業家の方はJVAにぜひ応募してみて欲しいです。

その他の過去受賞者
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