第22回JVA受賞者インタビュー

第22回JVA経済産業大臣賞

中村 友哉

株式会社
アクセルスペース 
代表取締役CEO

人工衛星を活用した事業で世界をリード。目指すは“宇宙ビジネスのデファクトスタンダード”

人工衛星を活用した事業で世界をリード。目指すは“宇宙ビジネスのデファクトスタンダード”

プロフィール
1979年生まれ、三重県出身。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中に手のひらサイズの人工衛星「キューブサット」の開発に従事し、2003年に世界で初めて打ち上げ・軌道上運用に成功。その後も研究の傍ら合計3機の超小型衛星プロジェクトに関わる。卒業後、同専攻での特任研究員を経て2008年に株式会社アクセルスペースを設立、代表取締役に就任。2015年より宇宙政策委員会部会委員を歴任。第22回「Japan Venture Awards」にて、経済産業大臣賞を受賞。
Q1JVAを受賞した時の感想と応募したきっかけ
ビジネス内容を評価していただいた上で経済産業大臣賞を受賞できたのは、非常に光栄なことだと思っています。今後、一層努力を重ねて、より大きな成果を出していきたいですね。
「Japan Venture Awards(JVA)」に応募をした理由はいくつかあります。
一つ目は著名なベンチャーが受賞を通し、次のステージに進まれているケースを多く見ていたからです。アクセルスペースは2008年に創業し、今年で15周年を迎えます。専用衛星の開発から始まり、現在は地球観測衛星プラットフォーム「AxelGlobe」と昨年発表した衛星のトータルソリューションを提供する「AxelLiner」の2事業となり、会社としては「Axelspace 3.0」という第3ステージに入った段階です。受賞ができれば事業拡大に弾みをつけられるのではないかと期待していました。
二つ目は事業の認知度向上が目的です。というのも、宇宙ビジネスは一般的に特殊なものといったイメージがあるのか、多くの方にとっては「自分にはあまり関係のない、遠い存在」と認識されていることが多いように思います。しかし、土地や天気、災害の管理、農業など、衛星で撮影したデータは、日常生活に密接したさまざまな場所で使用されているのです。こういったアワードに応募することによって、私たちの事業に関心を持っていただくきっかけになればと思いました。
受賞を機に取材の申し込みや事業に関するお問い合わせが増えていて、認知度向上にも繋がっていますし、大きな効果があったと思います。
Q2起業に至ったきっかけと現在の事業
もともと起業家になろうとは考えておらず、高校生の頃は有機化学に関心を持っていましたし、子どもの頃から宇宙に対して関心が強かったわけでもありません。そんな私が宇宙に関わる道を歩むようになったのは、大学で超小型人工衛星を開発する研究室に出会ったことがきっかけです。当時、人工衛星を作るなら国家単位のプロジェクト以外では不可能だろうと考えており、「学生が人工衛星を作ることができるのか」と大きな衝撃を受けました。ぜひ自分も人工衛星づくりに挑戦してみたいと思い、その研究室に入ることにしたのです。
試行錯誤の末、修士1年目の2003年に一辺10cm・重さ1kgの超小型衛星(キューブサット)を打ち上げた際には、非常に感動しましたね。その後も院生として研究を続けており、卒業後のことを悩んでいた際に研究室の教授から「今、大学発のベンチャーを作る準備をしているので、一緒にやらないか」とお声がけいただき、二つ返事でOKしました。
現在、アクセルスペースは小型人工衛星に関わるトータルソリューションを提供しています。具体的には自社小型衛星群による地球観測データを提供する「AxelGlobe」と、小型衛星の設計製造・運用などのワンストップサービスを提供する「AxelLiner」の2事業を展開しています。
Q3今後の展望と読者へのメッセージ
「AxelGlobe」は自社小型衛星「GRUS」5機体制で運用しており、2日に1度程度の撮影頻度です。今後はまず10機体制に増やし、毎日撮影ができる撮影頻度にするなど、より多くのお客さまのニーズに応えられるようにしたいと考えています。
「AxelLiner」は2024年の第一四半期に実証衛星初号機「Pyxis」を打ち上げる予定で、現在衛星の開発を進めています。現在ニーズが急速に増えており、小型衛星の製造~打ち上げ工程までのスピードをあげることが2023年の目標です。
採用面も強化していく予定で、開発者はもちろん、営業や事業開発といったビジネスサイドの方も募集しています。人工衛星の開発・製造と衛星データを活用した事業の両方に取り組んでいる会社は世界的にも珍しいですし、宇宙ビジネスにおけるデファクトスタンダードとなるべく事業を推し進めていきたいですね。
私たちが展開しているサービスは、日々の生活に欠かせない社会インフラだとも言えます。パートナーとなってくださる企業や投資家の方がいらっしゃれば、ぜひお声がけいただけますと幸いです。
また、私たちのようにこれまでにあまりなかった事業や珍しい事業に取り組んでいて、認知度の向上や価値の言語化に挑戦されている方は、ぜひJVAにチャレンジされてみてはいかがでしょうか。事業を世の中に広く知ってもらうきっかけになると思いますし、成長フェーズのベンチャーにもおすすめです。

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