第22回JVA中小機構理事長賞
平山 京幸氏
アルム
代表取締役CEO
- プロフィール
- 2000年、大阪府立高専卒。2006年に石川県でアルムワークス(2017年にアルム㈱に改称)を創業。2015年に㈱オーエスイーを事業承継し、同社代表取締役に就任。2022年、総務省主催「起業家万博2022」にて総務大臣賞、2022年には「CEATEC AWARD」にてデジタル大臣賞を受賞。第22回「Japan Venture Awards」にて、中小機構理事長賞を受賞。
- Q1JVAを受賞した時の感想と応募したきっかけ
- 私たちの製造業というのは、地味な仕事です。しかし、今回、受賞をさせていただきまして、我々のやっていることが認められたのだと大変うれしく思っています。受賞したからには“ベンチャー”という地位にとどまることなく、さらなる成長を目指さなければならないと責任も感じています。
応募のきっかけは、中小機構様の実施する「FASTAR」プログラムを通じて私たちのビジネスモデルをブラッシュアップしていただいた際に、メンターの方が「こんなアワードもあるんだよ」と声を掛けていただいたことです。今までもいくつかの全国的なアワードを受賞させていただくことはありました。これまではビジネスモデルや製品の画期性に焦点があてられたものが多かったのですが、「Japan Venture Awards(JVA)」は経営者に焦点があてられたアワードですので、そこを評価していただく機会もあっていいのではないかと思いまして、応募をさせていただきました。
受賞させていただき、祝福の言葉とともに、関わっている取引先にとどまらず大手・中小を問わず当社の製品に関心を持たれた企業からの問い合わせが増えています。非常に影響力が大きいと実感しています。
- Q2起業に至ったきっかけと現在の事業
- 弊社が取り扱っている「ARUMCODE」とは、部品等を作るにあたって工作機械を稼働させるために必要な加工プログラムを自動作成するAIソフトウェアです。これを開発しようと考えたきっかけは、リーマンショックでした。それまでは大手のメーカーの国内外の工場へ向けて自動車や携帯電話の生産ラインの自動化設備を設計製造していましたが、リーマンショックで取引先の加工企業が次々に倒産・廃業をしていくのを目の当たりにした中で、本当に自動化が必要なのは中小企業ではないかと考えるようになりました。当時、中小企業は恐ろしいほどにデジタル化が遅れて、生産性は数十年のスパンで考えてもまったく上がっていないように見えました。そんな状況を見ていると、中小企業こそ我々が手助けをすべきではないのかと、使命感のようなものを持ちました。中小企業の生産性を上げるためには、作業の工数の効率化や人がつきっきりになっていなくてはいけないなどが大きなネックでしたので、それらを「ARUMCODE」で“完全自動”にできたことは大きなインパクトを与えることができたと思っています。
導入した企業ではさまざまな成果が生まれています。これまでミクロン単位の加工をしたことがないような企業は、さらに高精度の部品が作れるようになりました。ただ作業が効率化されたということだけではなく、新たな製品開発や事業拡大にも繋がっています。
- Q3今後の展望と読者へのメッセージ
- 我々が目指しているゴールは、調達から物流まで、サプライチェーンの完全自動化です。そのためにはソフトウェアだけではなく、機械装置であったり、クラウドの構築など、さまざまな技術が必要になります。そのために旋盤加工に対応した「ARUMCODE2」、研磨加工に対応した「ARUMCODE3」などラインナップを増やしていくための製品開発を行っています。同時に工作機械も独自に開発していますので、次の打ち手としては、それらを日本全国、そして全世界に広げることで、サプライチェーンをネットワーク化させたいです。
創業17年目となる当社は、大手メーカーとも取引をさせていただき、ビジネスやモノづくりの厳しさも存分に教えていただきました。そんな中で自社独自の製品を見出すことができました。そんな私たちは、イグジットを目的とした企業ではなく、今後、100年企業、200年企業になっていくための経営を目指しています。
私にとってJVAに応募して受賞をするという経験は、経営者として大きな喜びでした。応募することが経営者としてのモチベーションの向上につながると思います。それだけではなくて、社外のさまざまな方々に向けてプロダクトの認知度を上げるというところでも、非常に大きな影響力を持っていることを実感していますので、ぜひ応募を検討されてみてはいかがでしょうか。