第22回JVA受賞者インタビュー

第22回JVA中小機構理事長賞

大和 建太

KAICO
株式会社 
代表取締役

オリジナルカイコを活用し、医療の発展や人々の暮らしに貢献。
独自技術で地球を救う大学発ベンチャー

オリジナルカイコを活用し、医療の発展や人々の暮らしに貢献。
独自技術で地球を救う大学発ベンチャー

プロフィール
関東出身、新卒入社の大手重機メーカーの転勤で九州へ移住。一度目の起業はうまくいかず、一旦はサラリーマンに戻るも、一念発起して九州大学ビジネススクールへ入学。同スクールの数あるシーズの中から蚕の技術に関心を持ち、起業プランを作成。同大学大学院特任准教授を経て、2018年にKAICO株式会社を創業。第22回「Japan Venture Awards」にて、中小機構理事長賞を受賞。
Q1JVAを受賞した時の感想と応募したきっかけ
実は起業して2年目の頃に一度応募したことがあり、その際は箸にも棒にもかからないような状況でした。今回はあずさ監査法人の方に推薦していただいて、二度目の挑戦でしたし、無事に受賞することができて安心しました。
また、私たちは現段階で業績を上げているわけではありません。これから事業を推し進めていくフェーズなのにも関わらず受賞できたのは、事業の将来性を評価していただけたのだと、非常に嬉しく思いました。
応募した理由は、会社の認知度を向上するためです。私たちは福岡を拠点としていて、地元のイベントに出演させていただく機会はあるものの、東京などの中心部ではほとんど名前が知られていませんでした。事業を拡大する上では会社の存在を知っていただくことが必須であり、KAICOにとっては認知度の向上が大きなハードルとなっていたのです。
しかし、今回の「Japan Venture Awards(JVA)」の受賞を受けて、経済産業省の九州経済産業局からご連絡をいただくなど、これまでにはなかったようなことが起き始めています。受賞の影響を日々感じていますね。
Q2起業に至ったきっかけと現在の事業
大学を卒業した後、重機メーカーで15年間勤務していました。その後は一度の起業を経て、経営について学びたいという思いが強くなったため、九州大学のビジネススクールに入学しました。そこでカイコの技術に出合ったのです。
もともと、養蚕業には「昔の産業であり、現在は減少している」といったイメージがあり、九州大学の日下部教授が研究してきた「カイコを利用した組み換えタンパク質発現の技術(カイコ・バキュロウイルス発現法)」を活用すれば、日本の養蚕業を復活させられるかもしれないという話を聞いて、非常に驚きました。最初は「本当に実現できるのだろうか?」と、疑問を感じたのも事実です。
しかし、話を聞くうちに少しずつ可能性を感じるようになり、教授たちも「技術で世の中に貢献したい」という思いをお持ちだったため、話し合いの末に起業することにしました。
KAICOでは、オリジナルカイコを利用したカイコ・バキュロウイルス発現法に特化した医薬品開発製造支援事業を展開しています。簡単に説明すると、カイコで作ったタンパク質を大学や企業などの研究機関に販売しているイメージですね。新型コロナウイルス感染症のスパイクタンパク質の開発にも成功しており、2020年10月よりtoCで抗体検査キットも販売しています。
Q3今後の展望と読者へのメッセージ
実用化には10~15年ほどかかるとは思いますが、今後は協力企業と連携して、経口型と注射型の人用ワクチンの開発を進めていく予定です。
現時点では動物用の経口ワクチンの実験が成功している段階で、それを活用した魚用のワクチン開発も進めています。養殖場では病気を防ぐために魚にワクチンを接種する必要があり、餌に混ぜる方法もあるのですが、1匹ずつ手作業で注射しなくてはいけないケースもあり、その過酷さが退職に繋がることもあるそうで……。SDGsの目標14である「海の豊かさを守ろう」を達成するために、養殖業は重要な産業です。そういった課題を解決することはもちろん、地球環境をより良いものにするためにも、カイコを使ったクリーンな事業をより推進していく必要があります。協力いただけそうな企業がいらっしゃいましたら、ご連絡いただけますと幸いです。
また、もし応募を検討している方がいらっしゃるのであれば、ぜひ挑戦してみてください。資金調達をする際には名前を広く知られていることが有利に働くと思いますし、顧客獲得にも繋がるのではないでしょうか。JVAを通して、素晴らしい事業に取り組んでいる企業がより盛り上がることを期待しております。

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